コラム

原理原則を教える

私はピアノの指導を主としていますが、指導の職に就いて以来大切にしてきているのが、「原理原則を教えること」です。

芸術は、本人の感情がどう曲を表現したいかがなければ、説得力は生まれません。
ですから、子どもたちが表現したいと思うものを、どのように音を操れば表現できるのか、
またすべてを自由にとらえさせては、美しい楽曲には仕上がりませんから、
表現する中で抑えなくてはいけない原則を教えていきます。



音楽は空間芸術であること。
ということは、空間に対していかに音の広がり方を操っていくかが大切であること。

ピアノは楽器に対する重さのかけ方をコントロールすることで、音色が変わる楽器であること。
広がりある響きの音を出したければ、打鍵のスピードをどうすべきで、重さをかける量、掛けている時間をどうすべきかということ。
反対にキラキラした粒立ちの速い音を出したければ、打鍵のスピードをどうすべきで、重さを掛ける量、掛ける時間をそれぞれどうすべきかということ。


楽曲を読み解くにあたっては、おさえなくてはいけない原則があること。
拍子によって、音価によって、音型によって、重さのかけ方の決まりがあり、それをおさえてこそ表情豊かな楽曲になるということ。

楽曲の時代によって、おさえなくてはいけない原則があること。

表情豊かに弾くということは、常に今の音よりも次の音をどうすべきか、もっと大きくとらえればフレーズごとにアプローチを変えるべきであること、
楽曲構成の読み方等を教えてあげれば、あとは本人の自由な表現をしてこそ、音楽は面白いと考えます。


「ここはこう弾いてね」と答えを教えてしまうことは、他の楽曲に取り組むときも自分一人の力では読めないことになります。
これは、音楽だけではなく、何事そうかと思いますが、答えよりも考え方を学ぶことが、
本当の意味での自立に繋がります。


現代は、簡単に答えがみつかる世の中になりました。
だからこそ、「考え方」を身に付けさせることは、とても忍耐が必要になっています。
答えを教えてしまうことは簡単です。
でも、育てるということは、「見守ること」だと強く感じています。



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