コラム

失敗を恐れない

西日本集中豪雨で被害に見舞われた皆様、謹んでお見舞い申し上げます。
自然の力の大きさを改めて感じる出来事でした。
一日も早い復旧を祈るばかりです。


今回のコラムでは、お子さまたちの教育に携わってきて願うことをまとめたいと思います。

小さなお子さんたちのレッスンをしていると、弾き終わってすぐに私の顔色や、
保護者の方の顔色を確かめるお子さんが多くいるのを感じます。


周りの空気をみられるようになることは、集団生活の中ではもちろん大切なことですが、
大人の価値観を仰がないと自分で判断できない。。という気持ちが見える時もあり、
少し心配になる時があります。


では、お子さんたちが大人の顔色をうかがうのはどうしてなのでしょうか?



お子さんたちが大人の顔色をうかがうのは、「否定」をされる経験が続いた時ではないかと感じます。


どんなことにおいても「ダメ」と言われること、自分ではどうしてダメなのかがわからないことを、否定されてしまうことが続くと、顔色をうかがうように判断を仰ぐ姿が見られます。


楽器をお教えする過程の中では、もちろん「良い」とばかりは言えない時もあります。
でも、お子さんの努力している「気持ち」そのものを否定するような言葉は言ってはいけません。


お子さんの努力や表現意欲をまずは肯定してあげること、
そして直していく過程の中で「いけない」と話すときは、
「どうしてダメなのか」をきちんと話して理解させてあげることが、
ご本人の意欲や思い切りのよさを損なわないまま、
よい演奏へ導いてあげることが出来る大切な過程だと感じています。


自分の思いや努力を肯定してもらうことが出来ると、
お子さんの中でも自分を発揮できる伸び伸びとした気持ちが育ちます。

芸術の分野においては、自分の思いを貫く強い気持ちは大きな力になります。


私はピアノの指導をしていますが、テクニックと芸術性の指導とどちらが難しいですかと尋ねられることがあります。
私自身は表現力の指導の方が格段に難しいと感じています。


テクニックの指導は、美しい音を出せるようになるため、100%お手伝いしていいと考えますが、
表現力は「考え方」を導くことはよくても、「マネさせる」」ことはしてはいけないと思うからです。


表現力の引き出しを掘り下げるためには、一方的な意見ではなく、
必ず「話し合い」が必要で、そこでもし否定をしてしまっては、
お子さんの柔軟な発想はストップしてしまいます。


子どもたちの意見を肯定してあげながら、ポイントを確認する言葉に置き換え、
意見をお互いに統一していくことで、子どもたちは自信を持って思い切りのいい表現が出来るようになると感じています。


本番は皆さん少なからず緊張なさっています。
その中で輝きを感じる演奏は、やはりご本人たちの「心」を感じる演奏です。
肯定してもらって育ったお子さんは、自分を発揮することに怖さがないのです。
ですから、たくさんのお客様を前に立った時も、自分を発揮することが十分に出来ます。


芸術における自己表現の世界ではとても大切なことです。
いえ、芸術の世界だけでなく、これからの未来を担うお子さんには、
ぜひ皆さんにそう育っていってほしいと願います。




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